権中納言定頼
※四条大納言藤原公任の子。
朝ぼらけ宇治の川霧たえだえに
あらはれわたる瀬々の網代木
【歌の背景】冬の宇治川での実景を歌ったもの。夜、川に立ち込めた霧、それが夜明けとともに川面を浮動し、薄れていく。そしてその絶え間から、あちこちと姿をみせてくる網代木。そんな素直な叙景歌。
【歌 意】冬の夜明け、宇治川に立ち込めている川霧が途切れ途切れに切れて、その切れ間からあちらこちらの瀬の網代木が次第にくっきりと見えてくる。(なんとゆかしい宇治川の眺めだ。)
【作者のプロフィル】四条大納言藤原公任の子。一条天皇の寛弘年中に侍従右近衛少将、次いで後一条天皇の長元2年(1029)に権中納言、さらに正二位兵部卿を兼ねた。寛徳2年(1045)に52歳で没。父公任とは作風は違うが、和歌はうまい。能書家でもあった。